黒沢明監督「七人の侍」あらすじと感想【前篇】

わたしは今でも、「世界のクロサワ」の代表作であるこの作品をイチオシします。

映画って、アクションあって、泣き笑いもあって、笑わせるところもあって、いろんな要素があると最高です。

黒沢明監督は、戦後GHQから「チャンバラ映画は(国威発揚もあるので)という理由で、「時代劇チャンバラ」を製作できない状況が長く続いていました。

ところがです。

昭和29年に公開されたこの作品では、GHQの許可基準が弾力的になったのを見計らって、黒沢監督は「このチャンスを逃してはならない」と精力をつくし製作にあたった作品です。

「七人の侍」、今の映画と全然ちがうところ、今でもたくさんあるんです。

  1. アクションシーンをたくさん用い、しかもスタントマンを一切利用しなかった。
  2. 百姓を助けるために、「一杯のごはん」だけで襲ってくる「野武士」退治のため、志村僑演じるリーダーが、「最低は7人必要だ」と「侍集め」を行います。当然侍はプライドが高く、なかなかこういう「ボランテイア」みたいな仕事を引き受ける侍は見つかりません。
    苦労して、やっと一人前とは言えないが、志村の人格に尊敬して、6人の侍が集められました。ここで「菊千代」という、侍か百姓かわからない人間を起用することになりました。この「菊千代」こそが、あの「三船 敏郎」が抜擢されました。
  3. 侍と百姓は、百姓は侍に助けを求めることがあっても、絶対には理解しあえず、潜在的に”対立”の図式を用意しました。
  4. 志村はこれを知っていて、いろいろ文句をいう百姓たちに武術を伝授し、「命をかけて決戦に臨め」と徹底的に感化することをやり遂げ、ここに侍と百姓の「絶対理解しあえないが、一時的に野武士退治にため」結合させることができました。
    ここで、野武士たちが百姓の住む「村」を襲ってくるシーンが連続します。
    もちろん、侍たちは「乗馬」は出来なければなりません。でも志村は、乗馬のとき落馬して、大けがするが、黒沢監督は志村に「ケガしても、この映画取り終えるまで、ガマンしろ」と酷な注文をします。
  5. 三船に対しては、とにかく「笑わせる」ことをイメージして、シーンの途中でわざと落馬させるシーンまで用意させます。
  6. 野武士との闘いで、7人中4人が命を落とします。そこで「ボタ山」みたいな「墓」を作ります。死んだ侍たちを弔う「墓の建造」のとき、砂嵐が巻き起こります。この「墓場シーン」は後で多くの日本映画で採用されることになりました。
  7. シーンの途中で、剣術を使ったシーンがたくさん出てきます。このシーン採用にあたっては、黒沢監督は、主演者に「剣術経験がない俳優」さんを起用することとしました。
    これは、既存の剣道が形式的になっていて、それではこの当時の侍たちの使っていた剣術とは違う、という黒沢監督の「信念」があったためです。
    武道の達人には、新劇俳優「宮口 精二」が起用されました。
    とうぜん宮口さんは苦労しましたが、創作の剣術は今見ても、作為性がなく、面白い出来上がりになっています。
  8. 小道具にもこだわりました。侍さんが着用した「兜」は、すべて「国宝」ものを拝借し、今までの映画になかった「迫力」を見せつけることに成功しました。
  9. 「菊千代」は、志村僑とは最初対立するが、やがて菊千代は実は百姓出身で、野武士に親を殺されたので、侍みたいなカッコをしているとわかりました、ここで黒沢監督が得意にしていた志村と三船の「親子関係」が出来上がり、志村と三船で「無言の」信頼関係ができました。
  10. アクシデントがあっても、黒沢監督は「ヤレ」と残酷な指令をします。土屋さん演じる百姓は、嫁を野武士に取られてしまうが、この「野武士急襲」シーンでは、野武士の隠れ家を放火で襲いますが、この「隠れ家」風がきつくて予想以上の煙火をします。全身やけどになりかけた土屋さん。「逃げるな」と黒沢監督から怒鳴られ、後で土屋さんは、「この腕の傷、七人の侍で実際にできたやけど跡です」と言われていました。
  11. そして最後は野武士と侍の対決シーンです。ここで野武士は壊滅状態になりますが、最後宮口さんに「鉄砲」を放ちます。これが宮口さんに命中して、最後死ぬ直前に「放り投げた」刀が野武士を殺害する。この鉄砲殺害シーンを見ていた三船は激怒し、残党となった野武士を、命がけで刀だけで殺害します。
    この「決戦シーン」の連続、すべて”スタントマン”なしで撮影されました。
    この映画、もともと黒沢監督は、アメリカ映画の「ガンマンの対決」をもじったものでしたが、アメリカハリウッドでは対決シーンに「スタントマン」を起用するのが常識でした。
    しかしこのスタントマンなしの「七人の侍」は、見た観衆からは”絶賛の声”が沸き上がりました。